不動産業界は、取引が多岐にわたり、複雑な業務プロセスが求められます。その中でも経理業務は、正確なデータ管理と透明性が特に重要です。しかし、ある法人様が抱える課題は、複数のシステムがうまく連携しておらず、業務の煩雑さが経理部門に負担をかけているということでした。個別のExcelや手作業による業務は、効率性を損ない、データの信頼性を脅かす要因となっています。
今回は、某法人様の経理業務プロセス改善に向けた取り組みを具体的に紹介します。
【法人様概要】物件選定により不動産の仕入れ、バリューアップした上で販売する不動産収益事業、不動産を小口化して複数の投資家に販売する不動産小口化商品事業、収益不動産のテナント管理や建物管理といったプロパティ・マネジメント事業など多岐に渡り不動産業を展開しています。
目次
プロジェクトの背景と目的
背景
会計システムと周辺システムとの連動性がなく、個別Excelや紙による業務のバラつきや手作業での加工やチェックをせざるを得ないことから経理部門の作業負荷が高く、データの正確性低下や改ざんのリスクが発生している状態にある。
データのIn-Outを明確にし、パッケージ標準に合わせたシンプルな業務プロセスを設計することで、ブラックボックスを解消し、可能な限りコストを抑えた会計システムの導入を目指す。
目的
上場企業としてプロセスの透明性、データの信憑性を高めるとともに、データ活用可能な環境に向けてデータ一元化された状態に整備していくことを目的に、業務プロセス観点およびデータ観点から現行を可視化する。また、ToBe業務の設計、業務における必要機能を特定した上で会計ベンダへのRFPを作成し、次期会計システムの選定および評価に繋げる。
プロジェクト課題
- 上流のフロントから会計に連携するシームレスなシステムを実現し、データの正確性および信頼性の向上を図る
- 事業部門・経理部門(管理会計 財務会計)における業務分掌を明確化し、コア業務へ注力した人財配置が可能な状態にする
- 業務効率化(社内環境、働き方、保管スペースなど)に向け、紙の電子化・低減を図ると共に、手作業による手間とミスを削減する
- ベンダーロックされた環境を脱却し、法改正に適応したソリューションにより、時代変化に対応可能な環境の整備と低コスト化を図る
プロジェクト概要
プロジェクトにおけるアプローチ
- 会社別および会計分類別(債権債務や一般会計等)に現行経理業務ヒアリングを実施し、業務課題を抽出
- 上流の事業部側で管理する物件売買、賃貸収入、修繕等の情報が会計の情報源となる場合は、営業部門や物件開発部門等にヒアリングを実施し、物件情報の入手から経理にて処理するまでの一連の流れを可視化
- 収集した現行ドキュメント類(現行業務手順マニュアルやExcel作業ツール)を確認および解析し、現行データモデル図を作成
- 既存システムの確認や執務エリアでの証憑書類の印刷物等を現地現物確認し、現状業務の理解を深めるとともに業務の問題課題感を認識
- インボイスや電子帳簿保存法等の法改正へ対応した会計パッケージの導入、マスタデータおよびワークフローの再整備、適切な部門への業務移管および役割の明確化等をポイントとしてToBeを策定
- 会計パッケージ候補ベンダーの製品紹介を受け、機能比較およびプロジェクトリーダーと共にRFPを作成の上、次フェーズに向けたベンダー選定および次期会計システム導入へのプロジェクトを計画
【業務改善プロセス】

業務改善プロセスの活用メリット
- 業務プロセス観点およびデータ観点から業務全体を整理することで、業務プロセスの標準化と共に、データが一元化され、データ活用可能なあるべき姿のToBeを設計することができる
効果
- 物件仕入・物件販売の商流として必要な情報を整備し、周辺システムから会計システムへのデータ連携により、仕訳用Excel作成やデータ加工、ダブルチェック等の作業工数が削減される
- 散在したマスタをデータモデリングにより統合化し、データの一貫性と品質を確保することができる
- 電子帳簿保存法に対応した会計システムを活用することで各種証憑や会計伝票印刷・ファイリングの作業工数を削減し、ペーパーレス化を推進する
- コア業務とノンコア業務の明確化により、担当者の業務分担を最適化し、個々の能力を最大限に発揮することができる