三菱商事株式会社様 – 生成AI利用マニュアル策定支援事例

背景

三菱商事株式会社様(以下、三菱商事)のITサービス部が独自に開発した生成AIツールを全社向けに公開することとなり、多くの社員がこの新たなテクノロジーに触れる機会が生まれました。しかし、社員それぞれの生成AIに対する知識・スキル(リテラシー)は大きく異なります。この状況を踏まえ、三菱商事では全社的な生成AI利用マニュアルを策定し、社員が正しくかつ安全に生成AIを活用できるよう導く手引を作成する必要がありました。

生成AIの基本構造と留意すべき課題

このマニュアルでは、生成AIがどのような仕組みで動作しているか、そして利用時に注意すべき課題について説明しています。

生成AIは「トランスフォーマー」という技術を用いて大量の学習データから統計的なパターンを抽出し、次に続く単語や文章構造を予測することで文章を自動生成します。これにより、表面的には洗練された文面を容易に作り出すことが可能となりますが、一方で生成AI自体が「考える」わけではなく、情報の真偽を保証できないという性質がある点に留意が必要です。

特に問題となるのが「ハルシネーション」と呼ばれる現象です。これは、実在しない情報や誤った知識をあたかも正しいかのように提示してしまうことを指します。こうした誤情報が業務上の判断や社外への情報発信に影響を及ぼす可能性もあるため、利用者にはこの問題点を十分に理解した上でツールを活用していただく必要があります。

このマニュアルでは、上述の仕組みや潜在的な課題を踏まえ、情報漏洩リスクへの対処方法、コンプライアンスの遵守、ならびに生成内容の根拠確認など、利用者が遵守すべき留意事項も明確にしています。これらを一体的に把握することで、三菱商事の社員は生成AIをより安全かつ有効に活用することが期待されます。

利用マニュアルの主な留意事項

以下は、三菱商事で策定したマニュアル上で特に重視したポイントです。

  1. 情報漏洩リスクへの対応:社内機密データや個人情報をモデルに直接与えないこと。
  2. コンプライアンス順守:法規制や社内規定に抵触しない内容で利用すること。
  3. 根拠の確認:生成された情報の信頼性を一次情報や信頼できるソースで検証すること。

プロンプトチートシートの提示

社員が適切な問いかけ(プロンプト)を行えるよう、マニュアルには簡潔なチートシートを用意しています。

  • 「あなたは優秀なアナリストです。」
  • 「**を解くアイデアを箇条書きで10個考えて。」
  • 「クリティカル・シンキングで考えて。」

Markdown記法の活用

多くの大規模言語モデルは、Markdown形式で書かれた指示やデータを正確に理解・処理する能力に優れています。この特性を活かすことで、プロンプト設計者(利用者)は情報を整理しやすくなり、生成される回答をより見やすくすることが可能です。マニュアルではよく使われるMarkdown記法と使用例を用意し、馴染のないユーザも理解できるように説明しています。

生成AI活用ユースケース例

初めて生成AIを利用する社員の中には、「どのように自分の業務に応用すればよいのか」戸惑うケースもあります。そこで、発想を広げる一助として、具体的なユースケース例を一覧化しました。これらの例を参考に、自身の担当業務へと応用するきっかけにしていただければ幸いです。

  • 顧客問い合わせ対応:FAQ回答の下書きや、顧客サポート対応メッセージの素案作成
  • 新規事業のアイデア出し:マーケティング戦略や新商品コンセプトなど、新たな方向性を探るブレインストーミングへの活用
  • 販売予測・需要予測:過去のデータやトレンド分析をもとに、今後の販売動向を試算する下地の作成
  • プロジェクト計画書の作成:タスク一覧・期間設定・リスク管理など、プロジェクト運営に必要な文書のたたき台作成

まとめ

三菱商事が生成AIツールを全社的に活用するために、社員ごとのリテラシー格差を埋めつつ、安全・正確な活用を支えるマニュアルを整備しました。これにより、社員が自信を持って生成AIを業務に活用し、生産性や品質向上につながると期待しております。

今後も、三菱商事様における生成AIの活用をより効果的に推進するため、一層価値あるご提案ができるよう尽力してまいります。

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