不動産業界におけるプロパティマネジメントの現場では、特に、賃貸管理基幹システムが業務要件を満たしていない場合、業務負荷や属人的な対応が常態化し、効率化が難しい状況です。これにより、データの精度や業務の透明性が損なわれ、結果としてサービス品質の低下を招くことも少なくありません。
今回、ある法人様は、次期基幹システムの刷新を契機に、業務の可視化とリーン化に取り組み、Fit to Standardなシステム再構築を進めることを目的に業務プロセス改善に取り組みました。
【法人様概要】不動産オーナーに代わって不動産の賃貸借管理や修繕・工事の実施、設備点検等を行うプロパティ・マネジメント事業を展開しています。
目次
プロジェクトの背景と目的
背景
現在の賃貸管理基幹システムは、業務要件を満たせていないことから人手負荷、属人的な対応が常態化しており、業務効率化、データ精度の向上が図れない状態にある。次期基幹システム刷新を控え、業務を可視化した上でリーン化し、Fit to Standardでシステム再構築を目指す。
目的
プロパティマネジメント事業が担うテナント管理、アカウント管理、建物管理における現行の業務プロセスを詳細に可視化し、現状業務分析、ToBe設計および期待効果を明確化することにより、次期基幹システム再構築に向けた投資価値判断を可能な状態にする。
プロジェクト課題
- 業務プロセス・ルールを整備し、情報の入口と出口を明確にして、透明性と利便性の向上を図る
- 担当・責任の明確化として、コアとノンコア業務を切り分け、属人化を防止し、コア業務にシフトできる状態を作る
- ペーパーレス化を推進するため、契約書や通知書、請求書を電子化し、可能な限り紙印刷・捺印業務を低減する
- AI等のデジタル活用によりノンコア業務を自動化し、本来のコア業務に注力できる状態にしていくことで、サービス品質の向上を図る
- 業務システム・インフラの再整備として、 ToBe業務における業務要求を明確化し、Fit to Standardによるシステム導入を実現することでコスト向上を抑制する
プロジェクト概要
プロジェクトにおけるアプローチ
- 現行業務ヒアリングは、全体業務を機能別に分類化し、セッションにて現行業務の可視化と課題を抽出
- 過去に作成された業務フローが有る場合は、業務フローと現行業務のプロセスや担当部門の差異を業務担当者に確認し、現行業務を可視化
- 現行業務フローが無い場合は、業務マニュアルを参考にフロー化し業務担当者に確認、または業務担当者に直接ヒアリングしつつ、その場でホワイトボードに業務フローを書き出し、認識齟齬がないよう実施
- 現行業務フロー作成後、プロセスの抜け漏れがないよう業務担当者にてチェックを行い、ToBe業務策定後の手戻りを防止
- 執務エリア(現地)にて既存システムや紙の契約書類等の現物確認を実施し、現状業務の理解を深めるとともに業務の問題課題感を認識
- ToBe業務策定は、新基幹システムで実現する機能とあわせて周辺効率化による自動化・電子化をポイントとして設計。そのほか、業務ルールや組織に関してマニュアルの整備や構成管理、役割の明確化等、事業全体の業務プロセス改善として経営層に提言
【業務改善プロセス】

業務改善プロセスの活用メリット
- 一業務に限らず事業全体の業務プロセス改善として活用でき、各業務および事業共通の問題課題における解決の方向性と施策を導くことができる
効果
- Excel運用を廃止することで、リスト作成、ファイル分割、ダブルチェック、印刷作業の工数削減
- 契約書の電子化、電子サインの導入、請求書の電子化、配信の自動化により作業工数を削減
- AIによる反社チェックやOCRによる契約書・請求書のテキストデータ変換および自動転記により、リードタイムの削減、転記ミスの軽減、工数削減
- 一元化されたデータベースにより、情報の正確性が保たれ、オーナーへのレポート精度が向上するとともにオーナーとの信頼性が向上する