世の中は、もっとシンプルであるべき。
現在、生成AIをはじめとするさまざまな技術が驚異的なスピードで発展しています。そのおかげで、私たちの生活はますます便利になっています。しかし一方で、技術の進化に伴い、日常が複雑になっていると感じることはないでしょうか?
新しい技術を自然に受け入れ楽しむ人がいる一方で、情報の洪水に押し流され、疲弊してしまう人も少なくありません。技術は本来、人々の生活を豊かにするためのものです。しかし、私たちはその理想から少しづつ離れてしまっているのかもしれません。
最新の技術とシンプルな生活、そのバランスを見直す時が来ているのではないでしょうか。
本当に便利なものはシンプルです。
- 開ける・閉める
- つける・消す
- 乗せる・下ろす
ゼロとイチという二元的な概念は、わかりやすく便利で、私たちの生活のあらゆる場面に存在しています。多くの問題は、このゼロイチで解決できるのではないでしょうか?
AI SWITCHとは
AI SWITCHは、生成AIの力を誰もが簡単に使えるようにするための多目的なUI/UXフレームワークです。外出の計画、医療アドバイスの受診、新居の探索など、様々なニーズに合わせてパーソナライズされた提案を行うことができます。
AI SWITCHのランディングページ
AI Switchのフレームワーク実装例
AI SWITCHの中心概念は、人気のマッチングサービスのようなスワイプ操作を使った、yes/noで答える質問形式です。この直感的なUIにより、AI技術の複雑さに苦手意識を感じている人でも、簡単に使えるようになっています。 複雑な課題を会話形式の質問に分解することで、ユーザーは自分が求めている情報を見つけやすくなります。 また、Dify(生成AI)、Notion(コンテンツ管理)などのモジュールと連携し、コンテンツの作成から提供までをAI SWITCHで実現できます。
AI SWITCHの大きな特徴は汎用性です。医療、旅行、不動産、飲食、美容・アパレル、公共など、様々なニーズに合わせてカスタマイズでき、しかもスピーディーにリリースすることが可能です。このような柔軟性が、お客様の複雑化しているサービスをシンプル化し、顧客体験の向上に役立つと考えています。
特にユーザー体験に力を入れており、生成AIをはじめとする技術 の複雑さが障壁にならないよう、シンプルでわかりやすいインターフェイスを設計しています。馴染みのあるインタラクションパターンを取り入れることで、AI システムへの警戒感を和らげています。 人工知能がますます生活に浸透する中、AI SWITCHは、この強力な技術を私たちの日常に自然に統合する良い事例となっています。ユーザーが自信を持ってより良い決断ができるよう支援するツールです。
AI SWITCHの特徴
- 心理的ハードルの低減 生成AIに対する不安や複雑さという心理的バリアを、シンプルなYes/No形式で取り除きます。「難しそう」というイメージを払拭し、技術への心理的抵抗感を軽減します。
- 幅広い用途 お出かけ先、健康、不動産など、多様な領域をカバーすることで、ユーザーの日常生活に密着したサービスに適用できます。
- 結果の明確さ 複雑な説明ではなく、直接的な提案やアドバイスを提供することで、ユーザーにとってわかりやすい情報を届けます。
- ストレスフリーな体験 質問に答えるだけで最適な情報や解決策にたどり着けるため、ユーザーの認知的負荷を最小限に抑えています。
- テクノロジーを身近に 生成AIの複雑さを隠蔽し、誰もが簡単にAIの恩恵を受けられるようにしています。
AI SWITCH:アイデアの前身
このアイデアは、2019年に一般社団法人社会システムデザインセンター(以下、SSDC)主催で開催された「AIワークショップ」で生まれました。私が参画していたチームは、当時流行であり、事業において顧客との関連性が高かったMaaSをテーマに選びました。
「MaaS×AI」でブレインストーミングを始めたものの、AIが最適なルートを提案するとか、旅行プランを自動生成するとか、既に聞いたことのあるアイデアばかりでした。直接的にビジネスへ適用する思考になると、真面目なアイデアばかりで視野が狭くなりがちです。
そこでふと、自分が毎週末パートナーとペットを連れてどこへ出かけようかとよく悩んでいることを思い出しました。仕事で疲れていて近所の公園がちょうど良い時もあれば、新しい場所や新しい体験を求めることもあります。
なにかアイデアを出す時、私は「頭の中の子供」に手伝ってもらいます。とうぜん大人の「当たり前」なんて知りません。純粋で好奇心いっぱいの目を輝かせながら「これやったらどうなるんだろう?」と何にも縛られずいつも自由に動き回っています。子供のように遊び、ふざけ、鼻歌を歌いながら進む。そこにはルールなんてなく、そんな無邪気さが私のクリエイティブの根底にあります。
そんなお出かけの悩みから、元気な時、ちょっと疲れている時、仕事で嫌なことがあった時、今の感情や気持ちをAIに伝えたら、ぴったりの場所を提案してくれるのは面白いのではないか?と思いつきました。もともとの路線からいい具合に外れていますが、目的地はあっています。感情分析からお出かけ先を提案するというのは、技術的にも話題性があり、良いアイデアだと感じました。
つぎは、感情なんて本人すらわからないものをAIに伝えるにはどうすれば良いか?
ここに更に頭を捻る面白さがありました。
2013年頃から「16の性格診断」を取り入れた、チームマネージメントツールを自分たちの部門で企画開発しました。自分の変化やチームメンバーのタイプを知るというもので、当時はMBTIが流行る前でした。「16の性格診断」では、質問に対して悩まず直感で回答を選んでいくスタイルです。このときの経験が頭に残っていました。
そこで、感情をAIに伝えるには直感で回答できる仕組みが良いと考えました。直感的に操作できるということは、入力はシンプルでなければなりません。つまり、Yes/Noです。
直感的にYes/Noを表明するUIとして、Pairsやtappleなどのマッチングアプリで採用されている、画像をスワイプして意思表示をする仕組みを取り入れたいと思いました。
■ ユーザーがAIに感情を伝える際のUXとして必要な要素
- 直感的な操作性
- 直感はユーザーの内面を映し出すため、UIも直感的に操作できる必要があります。
- シンプルな入力
- 入力はYes/Noで簡潔に。
- 直感的なUI
- 画像をスワイプして意思表示する仕組みを採用。
- 質問数の最適化
- 10の質問で結果が分かるようにし、ユーザーの負担を軽減。
このような流れで、AI SWITCHの前身は生まれました。
SSDCのAIワークショップでは実際に画面UIの実装と、Azure Machine Learning(機械学習)を使ったPoCを作成しました。当時AIの学習に使った教師データは数百件程度で、もちろん心理学者などいませんから、本当の感情分析までは実現できませんでした。ですがコンセプトとしては面白いと評価いただきました。
生成AIとDifyの登場
今回、過去のAIワークショップで発案したアイデアを、改めて「AI SWITCH」としてPoC(概念実証)を行おうと思えたきっかけは「生成AI」と「Dify」の登場が大きなきっかけとなりました。
Difyでは、RAGという汎用的な知識ベースを簡単に扱えるため、データベースのように使えます。また、作成したWorkflowをそのままAPIとして公開することができるので、外部システムとの連携も容易です。さらに、Workflow内で利用しているプロンプトは柔軟に変更できるので、様々なユースケースに合わせて最適化することが可能です。 つまり、Difyを活用することで、生成AIを使った複雑な処理や柔軟なデータ活用が、比較的簡単に実現できるのです。これにより、AI SWITCHのような汎用的なフレームワークを、幅広い用途で活用できるようになります。
最適解の予測という観点では、従来のAIに比べて精度が劣るかもしれません。しかし、細かい技術的な問題は後回しでも構いません。最初にお話した難しく考えることはやめましょう。まずは「これ、いいね!」「ここがイケてないね!」と、実際に触れて体験できるものがチームメンバーに届くことが重要です。
生成AIとDifyがもたらしてくれた「実装の手軽さ」により、過去のMaaSでのアイデアが「AI SWITCH」としてリメイクでき、実際に触ってみることでその価値の高さを再認識することができました。
AI SWITCHは、複雑な生成AIをシンプルにし、誰もが直感的に利用できるプラットフォームを目指しています。これからの時代、「シンプルさ」こそが多くの人々に受け入れられる鍵となるでしょう。